東独にいた

【東独にいた】1巻の感想・考察レビュー┃主人公の圧倒的強さ必見

おすすめ度

【東独にいた】は意外と知られていないけど、かなり面白い漫画だと思います。

簡単に言えば戦争もの&主人公無双。

第二次世界大戦後、まだドイツが東西に分かれていた時の東ドイツ(東独)の物語。

社会的な背景などは史実に沿っている気がします。ただ、半分以上はフィクションのSFです。

ストーリーは全く違うけど、ジャンル的に近い漫画と言えば『ヨルムンガンド』かなと思います。これもかなり面白い漫画でおすすめ。

【東独にいた】1巻の簡単ストーリー・感想・考察レビュー

極力ネタバレを避けるようにし、ワンシーン画像もストーリーに関係のない部分をピックアップしています。ぜひ実際の漫画を読んでみてください。

【東独にいた】の舞台は1985年、ベルリンの壁崩壊前の東ドイツ。

東西に分かれていたドイツですが、西は資本主義、東は社会主義となっており、ちょうど今の韓国・北朝鮮と似たような状態だったと思います。

東独、つまり東ドイツは北朝鮮のような社会主義&監視社会。

おそらくは冷戦時代~ベルリンの壁崩壊辺りまでのストーリーとなりそうな感じです。

Episode.1 フレンダー(見知らぬ人)

街の本屋の店主、日系人の『ユキロウ』、そこに通う女性ドイツ軍人『アナベル』、この2人がこの漫画の主人公と言っていいでしょう。どちらかと言えばアナベルがメインかも。

社会主義で統制の厳しい東ドイツは徹底した監視社会となっており、国は貧しく、政治の腐敗も進んでいました。

この辺はリアリティを出すために当時の史実に沿った設定になっていると思います。

そんな東ドイツの行く末を憂い、国家転覆を狙う反政府組織フライハイトのリーダー『フレンダー(通称:見知らぬ人)』、とそれを捕まえようとする軍人のアナベル。

この設定でストーリーは進んでいきます。

アナベルは東ドイツの軍人であると共に、政府が開発した超人部隊「多目的戦闘群(通称:MSG)」に所属。

MSG所属兵は身体改造により超人的な力を手に入れ、反政府組織からは『神軀兵器(しんたいへいき)』として恐れられていました。

もうこの辺からはSFですね。MSG所属アナベルの身体能力はビルを飛び越え、素手で人を殺せるレベル。

ドーピング云々ではないので完全フィクションの世界です。まー漫画なんで当たり前ですけど。

ただ、当時の東ドイツはソ連と並び、ドーピングの常連国であったのも確かだったようです。

超人組織を持っていたとは思えませんが、人体改造の実験くらいは本当にしていたかもしれませんね。

ちなみに反政府組織フライハイトのリーダー『フレンダー』が実は本屋の店主『ユキロウ』であったことが1巻1話で早々に明かされます。

ユキロウに好意を抱くアナベル。しかし敵対する反政府組織ということは知りません。

ユキロウの方だけはアナベルが敵であることを知ってそうな感じです。

Episode.2 アナベル・フォードール

アナベルの自宅、両親の食事シーンからスタートします。

この手の超人人間の場合、政府監視の元、政府内施設で過ごしているのかと思いきや、意外と普通の暮らしをしている設定になっています。

無理矢理人体改造されたような雰囲気もなく、性格面も穏やかでモラルがあります。

この後出てくるアナベル以外のMSG隊員も聖人君子のようなできた人だらけ。身体能力だけでなく性格面も無双な感じです。

一方、反政府組織フライハイトのリーダー、フレンダー(=ユキロウ)はアナベルの人の良さと自分への好意につけ込み、仲間に引き込もうと画策します。

アナベルはユキロウとのデート中、反体制派に対し、否定ではなく肯定的な意見を述べます。中立的な立場を見せるアナベルに対し、ユキロウも武力ではなく対話で政府を説得できるのではと考えますが…

タイミング悪く、フライハイトがテロを仕掛けた施設でアナベルの両親が被害に逢い死亡します。

反政府組織にも寄り添う位置にいたアナベルでしたが、この事件をきっかけにフライハイトが親の仇になってしまいます。

それを間近で見ていたユキロウもアナベルを仲間に引き入れることを諦めるしかありませんでした。

テロによる爆発、両親の死亡、フライハイトへの怒り…第2話の最後6ページは全くセリフがないにも関わらずアナの感情の移り変わりが良く表現されています。

東独にいた

悲しみ、絶望、怒り…セリフ無しでありながら簡潔に強烈に表現できている1ページではないでしょうか。

【東独にいた】の作者『宮下暁』さんの作品はこれしか知らないし、探しても見つからないのでおそらくは初作品だと思うのですが、いきなりこれだけの表現力は素直にすごいと思います。

Episode.3 涙すら流せない

テロにより両親を失ってしまったアナベル、現場にいながら助けることができなかった同じくMSG隊員のクロード、二人は改めてフライハイトへの復讐を誓います。

この時もまだ、アナベルはユキロウがフライハイトのリーダー、フレンダーであることは知りません。

一方、フレンダーはアナベルの両親がテロで亡くなってしまったことを知り、仲間には引き込めないと判断。敵となってしまう前にアナベルの抹殺を指示します。

ユキロウも少しはアナベルに好意を抱いていたのかなと思っていましたが、そこは組織のリーダーということもあり、冷静・冷徹な判断を下したようです。

ただ、その指示を出すフレンダーを見てフライハイト情報部のリーダー『エミリア』は不安を抱きます。フレンダーの様子が少しおかしいと。

この辺の感情の読み合いもセリフで伝えるのではなく、キャラクターの表情で伝えるのが上手いですね。

細かいとこですが、そういう部分の積み重ねがキャラ性を強め、感情移入しやすくなってくると思います。

Episode.4 神軀兵器(しんたいへいき)

フレンダーは複雑な感情を抱いてはいたものの、結局アナベル抹殺の指示は変えず、フライハイトの刺客がアナを襲います。

しかし、「神軀兵器(しんたいへいき)」とまで言われたMSG隊員のアナベルは感知能力も高性能レーダー並に優れており、尾行は無意味。

フライハイトの暗殺部隊はアナ一人に返り討ちに遭います。

このエピソードはMSG隊員アナベルの圧倒的な強さを示す回でした。

刃物も銃も効かず、素手で人体を切断する驚異的な身体能力。アナを襲ったフライハイト隊員全員に死と絶望を味わわせます。

音や動きが上手く表現されているバトルシーン、漫画でも十分面白いのですが、アニメでも見たくなる回でしたね。

文字のネタバレではなく、ぜひとも漫画で読んで欲しい1巻のハイライト回だと思います。

Episode.5 1日1分でいいから

これまで登場したMSG隊員はアナベル(女)とクロード(男)の2名でした、ここにイシドロ(男)、イーダ(女)、エッボ(男)の3名が登場し、合計5人のMSG隊員が揃います。

5人が揃った会議の場、情報分析に長けたイシドロが、フレンダーは東洋人である可能性が高いと言います。

日本人のユキロウがアナベルの脳裏を過りますが、すぐにその考えを打ち消します。好意を抱いている人物が仇であるはずがないと…。

洞察能力に優れたMSG隊員なので、その違和感を他4人も感じ取りますが、追求はせずアナの判断を信じ任せることに。

先にも書きましたが、登場するMSG隊員5人全員が本当にいい人で、組織よりも個人・国民を想う気持ちが見てとれます。

欠点という欠点がない主人公アナベルとその仲間。負ける要素が一切見当たらない完璧な無双漫画として2巻へと続いていきます。

【東独にいた】1巻のまとめ

漫画の1巻は設定付けのために説明口調になりやすい傾向にありますが、【東独にいた】はそんな印象はほとんどなく、いきなり惹きつけるストーリーとなっています。

逆にキャラクターの感情を表情のみで表現するなど、極力文字を減らそうという意識すら感じます。これはなかなかできることではないかも。その辺も高評価ポイントです。

フライハイトのリーダー、フレンダーが本屋のユキロウであるという事実がネタバレとなってしまいますが、これは1話早々に明かされることなのでそこまで大きなことではないかと思います。

この漫画の面白いところは伏線回収やどんでん返しみたいなことではなく、アナベルら神軀兵器の圧倒的な力とバトルシーンです。

そういった意味で、ストーリーをまとめた文章ではなく、ぜひとも実際の漫画・コミックスを読んで欲しいと思います。

バトルシーンだけでなく、展開ももちろん面白く仕上がったいます。

そもそも、戦争ものや歴史ものは鉄板と言えるほどハズレが少ないジャンル。

もちろん、フィクションなので史実と異なる部分もあるかもしれませんが、それでも時代背景自体は正史に沿っていると思うので、東西冷戦時代のヨーロッパを知る上でも面白い漫画だと思います。

MSG所属兵は爆弾も銃も刃物も一切効かない、まさに神がかった身体能力を持っており、冗談みたいな設定ではありますが、それでも不自然さはなく、頭脳戦もあったりするので飽きがありません。

アナベル含むMSG全員が政府軍でありながら、どこか反政府的な思想も持ち合わせており、貧しい東ドイツ国民に寄り添った一面を度々見せます。

超人的肉体を持ちながらも感情は人間味に溢れており、いい人揃いのMSGなので自然と応援したくなります。

一方の反政府組織フライハイト側にも事情があり、各々のストーリーも出てきます。

この辺りは敵味方どちらも感情移入しやすいようになっているガンダムパターン。それも面白さを引き出している設定だと思います。

最後に一つだけ、1巻の1番最初がこのシーンで始まります。

東独にいた

第一次世界大戦は「化学」、第二次世界大戦は「物理学」、そして大三次世界大戦が起こるのならば「君達」つまりMSG(=超人)の戦いになるだろうと言っています。

21世紀の今となっては改造人間、超人部隊などは非現実的ですが、第二次世界大戦直後はそう考えている国が本当にあったのかもしれません。

2巻の話で少し触れますが、この物語と同年代のアメリカでは映画ターミネーターが公開となり大ヒットを記録します。アメリカでもそういう考えや組織があった可能性もありますね。

MSG指揮官や主要5人以外も今後登場するのか、そのあたりも注目です。

【東独にいた】について

漫画タイトル 東独にいた
作者 宮下暁
最新刊 5巻(2021/8/19発売) ヤンマガWEB連載中
ジャンル アクション、戦争、歴史、無双
この漫画のおすすめ度 /5段階評価
1巻の評価・面白さ  久しぶりに面白い漫画が!